若者のすべて
先日観にいった映画の話です。
新宿のK'sシネマにて、今週末まで『http://cinefil-imagica.com/dvd/ad75/』が開催されています。
アラン・ドロンが一世を風靡したという世代でもないため名前ぐらいはしっているものの、特にファンというわけでもなく出演作は3・4作くらいしか見ていないのですが、去る8日に都心に用があったので、その合間に見てきました。奇しくも11月8日はアラン・ドロンの誕生日。作品はルキノ・ヴィスコンティ監督の『若者のすべて』。
結論から言いますと、素晴らしかったです!生涯ベストにランクインしそうなくらい。3時間弱の長い映画ですが、あまりだれる事もなく最後まで集中できました。アラン・ドロン美しい。以下ネタばれあります。
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兄弟はみなキャラが立っているというか、それぞれの個性が感じられました。特に次男のシモーネ(レナート・サルヴァドーリ)が転落していく様は胸が痛みました。転落していくシモーネに対し、兄弟たちは何もできません。長男は家庭があり、五男はまだ幼い。四男は(おそらく)兄弟の中でも頭がよくて現実主義。その中で三男のロッコだけが一番シモーネから危害を与えられているにもかかわらず手を差し伸べます。その様は作中の台詞にもありましたがまさに"聖人"。しかしロッコが手を差し伸べるほどに、シモーネは滑り落ちていくように堕落していきます。
最後の方、パーティでの「家を建てたら最初に通った人の影に石を投げる(いけにえの意)」というロッコの台詞。そして四男が五男に対して語る言葉。これらがとても印象的でした。
あるサイトで「シモーネがむかつく」みたいな感想をみつけたのですが、私は逆にシモーネばかりに感情移入してしまいました。もちろんロッコが涙するシーンは心動かされましたし、彼の背負っているものに対して気が重くなったりしたのですが、自分と重ねるのならば断然シモーネです。
一度はチャンピョンにまでなったボクシングもロッコに抜かれてしまい。愛する人・娼婦ナディア(アニー・ジラルド)はシモーネではなくロッコと愛し合うようになります。もう「ロッコなんでもできすぎなんだよ!」って感じです(笑)しかもシモーネが渇望しているものをロッコはシモーネほどは望んでいないのだろう、と示唆するシーンが多数あってますます持っていない者(シモーネ)は憤りを感じるというか、「自分はあれだけのことをしているのに何で許すんだ」という感情もあるというか。
映画のなかでアラン・ドロンの美しさは際立っていましたし、だからこその"聖人"だったのでしょうが。
ロッコはどこか浮世離れした印象なのですが、シモーネには「堕ちていくときってこうなんだろうなぁ」と納得させるようなリアリティがあったことも影響しているのでしょう。役者の力もあるんでしょうがね。
あと母親役。偏見ではありますがイタリアの母親のイメージにぴったりでした。ヒステリックというか。
この映画は脚本が素晴らしかったのだろうな。さすが名作と名高いだけのことはあります。
ニノ・ロータの音楽もよかったです。これを期にもっとアラン・ドロンの出演作を見てみたいと思います。
映画を見た後本屋に寄ったところ、この映画の脚本を収録した単行本を見つけパラパラ読んでみたのですが、映画にはなかったシーンがいくつかあり(ex.父親の葬儀の場面)興味をもったので購入したかったのですが手持ちがなくて買えず。
- 作者: ルキノ・ヴィスコンティ,吉岡芳子
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